Dir: 荻上直子
Cast: 小林聡美, 片桐はいり, もたいまさこ
Story: サチエ(小林聡美)がヘルシンキに開店した日本料理の食堂「かもめ食堂」。もちろん客なんてくるわけもなく、ようやく来た客は日本オタクのお兄ちゃん。彼にガッチャマンの歌詞を聞かれて、なかなか思い出せないサチエは図書館で見かけた日本人(片桐はいり)に声をかける。
Comment: いまさらですが、かもめ食堂です。封切ったとき映画館で見たかったのですが、タイミングがわるくてみそびれ、DVDが発売になったと同時に購入。しかし、なかなかみる暇もなくあっという間に1年(そんなDVDが我が家にはいっぱいありますが…)。思えばこの一年映画館に行くどころか自宅でDVDを見る余裕さえなかったんだなあ(しみじみ)。
さて、かもめ食堂ですが、見て思った私の感想は「観る人をせかさない映画だなあ」ということ。映画って2時間の間に100年も1000年も時間が過ぎうる世界だから、なにかと詰め込みすぎな場合ってあるなあと思います。もちろんそれはエキサイティングで、充実していて、あっというまの2時間ということで、それはそれで素晴らしいのですが、一つの場面に意味をもたせすぎちゃうと感じるときがあります。つまり見ている間に様々な複線を頭に引っ掛けておいて、要所要所でそれを確認するような信号があって、あたまの中フル回転。この映画ではそんな感じの必死さがなくて、ふんわり見ていられて気が楽でした。
私のもっとも好きなシーンは、もたいまさこさん演じる荷物がみつからなくて途方にくれていた女性がコーヒーを飲んでいる場面。彼女は途方にくれてかもめ食堂でコーヒーを飲んでいるのですが、周りのひとの言葉にはっと気がついて、即座にコーヒー代のコインをパチリとテーブルに置いて、にっこりと「行ってきます」と出かけていきます。ひとりでDVDをみていても、こちらまでにやりとさせられて、とても気持ち良かったです。この3人組(小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ)のやりとりは、不思議なやさしさが感じられて、気持ち良かった。とても大好きな映画になりました。
食べ物編
さて、かもめ食堂はそのなのとおり食堂なので、いろいろおいしそうなものがいっぱい出てきます。おにぎり、とんかつ、からあげ、生姜焼き、鶏大根。鍋で炊いたご飯にパリパリのりのおにぎり、包丁をいれるとさくっと音がするとんかつ、たっぷりの油で丁寧にあげられたからあげ、醤油色がたまらない生姜焼きに、鶏大根。実にうまそうです。
でも、この映画をみたときに私がおもったのは「食べたい」ではなく「作りたい」でした。ちょっと不思議な感じ。キッチンはできたての食堂ですからピカピカなんですが、食器や鍋はすべてスカンジナビアデザイン。イッタラとかマリメッコとか北欧デザインがいっぱいです。黒い鉄鍋のようななべでごはんを炊いて、銅のフライパンで生姜焼き。皿はヘリがついた白の洋皿でムーミンのマグカップも出てきます。日本茶も洋風なデザインのポットで入れてます。日本食とこれらのデザイン食器との不思議なコンビネーションが「こざっぱり感」を出していて、自然にああいいなあと思わせてくれます。気持のいい台所に良い香りがしそうな料理。
しかし、今回もっとも気になって、かつ今日あたりつくってみようかなあとおもっているのは日本食ではなくシナモンロール。焼きたてのシナモンロールの香りに、地元のおばさんがたが常連さんになってくれます。生地をこねてつくるシーンもわくわくさせられます。あのオーブンからだしたばっかりのものを「召し上がれ」と出すのはどうしてあんなに魅力的なんでしょうね。