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青空の卵 (坂木司)

青空の卵
青空の卵
posted with amazlet on 06.06.12
坂木 司
東京創元社 (2006/02/23)

Category: 推理小説 短編連作
Story: 坂木司は外資系の保険の外交員。彼には学生時代からのちょっと変わった友人鳥井真一がいる。学生時代のいじめもあって今はひきこもり状態の彼はちょっと食にうるさい変わり者だ。鳥井宅でご飯を食べながら今日あった不思議なことを話すと、外にもでていない鳥井はあっさりとその真実を教えてくれる。

Comment: 私の大好きな、短編連作の推理小説で美味しい食べ物がでてくるシリーズ。安楽椅子探偵スタイルのお話ですが、連作の背景にあるお話は二人の若者のちょっとばかり遅い成長物語。
名探偵であるところの鳥井は生い立ちやいじめのせいでひきこもり、というか不特定多数の人混みや人との接触を極端に嫌う状態。クラシックな安楽椅子探偵はこの偏屈さや奇妙な行動がそのキャラクターとして定着しているスタイルが多いのですが、このお話ではそこからの脱却をはかるというちょっと変わったパターン。ワトソンもしくはヘイスティングス大尉にあたる坂木司は自分が友人の唯一の外界であることをうれしく思いながらも、その偽善性に常に悩む人情派。
正直言ってこの話を読み始めた時、そんな葛藤は中学くらいの時に感じるもんじゃないの?とか、これもまたいじめについてやたら直接的に訴えかける文学か?とちょっとひるんだのですが、話が進むにつれて、これもまた成長前の若さを示す記号の様なものなのかなあと気にならなくなりました。このお話はシリーズとしてあと2冊で完結するのですが、(仔羊の巣動物園の鳥と続きます。まだこの2冊は文庫化されていません)最初のこの本はやはりお話として洗練されていない感じがします。それでも、ついよんでしまう魅力があって、されに読み進めていくと話の作りやストーリーのまとまりも良くなっていき、本当にさ~っと3冊読めてしまいました。
 でてくる食べ物も、最初はシンプルですが、どんどん鳥井が心を開くに従って、様々なものを様々な人に振る舞うようになり、こったものが出てきます。趣味が全国の銘菓を取り寄せて食べるっていうのもちょっと面白いでしょ?
個人的には久々にあたりのシリーズで、楽しかったです。同じ著者で商店街のクリーニング屋の2代目の奮闘記切れない糸も読みましたが、これも凄く良かった。シリーズ続きが楽しみです。この本はまた別のエントリーとして取り上げますね。

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コメント (2)

そそる!
滅茶、そそります!!

アマゾンのほうも見たけど、やはり人によって評価がわかれているほうが(この点はイマイチかも~ってポイントが他の人にはツボだったりするわけで)興味がわきます。

仔羊の巣のほうも、もうすぐ文庫本発売になっているじゃん?

とりあえずは、二冊ゲットかなあ?


最近ねえ、文庫本待ちというポリシーが崩れつつあって・・
例の北森さんのは、文庫本でないのに買ってしまった。(笑)

konama:

>たらり子さん

食べ物のバリエーションが巻が進むにつれて増えるので、ちょっと楽しいですよ。

そう、説教くさいうじうじした感じと、ちょっとボーイズラブ系なにおい(女の人のかかれ方が極端なのも含めて)が駄目なヒトは駄目でしょう。が、どちらもある程度の大人なら風味として味わえる程度でしょう。

あとね、誰も死なないミステリーって私は好きなんですよ。

私はとうの昔に文庫待ちできない体質になってます。やっぱり目の前にあるのに、読めないっていうのは駄目なのよ。北森さんの新作はいかがでしたか?

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2006年06月12日 21:32に投稿されたエントリーのページです。

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