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東京奇譚集 (村上春樹)

東京奇譚集
東京奇譚集
posted with amazlet on 05.11.10
村上 春樹
新潮社 (2005/09/15)
売り上げランキング: 7

Category: 短編集 わりと幻想的な
Story: 「偶然の旅人」「ハナレイ・ベイ」「どこであれそれが見つかりそうな場所で」「日々移動する腎臓のかたちをした石」「品川猿」の5編。偶然の旅人は村上家のピアノの調律に来ていた青年の、偶然の出来事に導かれて人生のこぶのようなものを乗り越える話。

Comments: 結構さらりと読める短編集でしたが、どれも雰囲気をもっていて、読み始めるとすっとその世界に取り囲まれるようなお話でした。相変わらず氏の作品は人気が高いだけに賛否両論あるようですが、私は結構この本は気に入りました。

短編は主に『新潮』に掲載されたもので、書き下ろしの「品川猿」を加えての出版のようです。いつもの村上ワールド的に不思議なお話は「品川猿」で、日常の不思議にいきなり猿の名を与えられたよくわからない解決が与えられます。昔からの氏のファンにはやはりこの話が一番受けが言いようですね。個人的にはサーフィンで鮫にかまれて命を落とした息子の死から立ち上がろうとする母の話「ハナレイ・ベイ」と人生にとって重要な女3人を探し求める作家の話「日々移動する~」が好きでした。(あんまりそういっているレビューアーはいないので、私の趣味の問題かもしれないが)

全体としてテーマに喪失と再生があると思うのですが、最近の村上作品の傾向と同様に、けして救われない訳ではないエンディングに元気を貰えます。作品としてのまとまりや物語を磨き上げるということがお話のすっと入り込める雰囲気やストーリーの座りをよくしているのかなあと思います。

ハードカバーで買うことはないとは思いますが、文庫ならお勧めの一冊でした。

しかし、この本の唯一の不満は帯。デザインやら色は素敵だと思うんだけど、この辞書みたいな奇譚の説明はかなり陳腐な気がする。

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2005年11月10日 09:48に投稿されたエントリーのページです。

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