Category: 推理小説
Story: 「名探偵の掟」:名探偵天下一と警部大河原がありがちな推理小説の登場人物としてまたその役を演じる不満をのべながら謎をとく、笑える推理小説
「名探偵の呪縛」:名探偵天下一が不思議なまちに迷い込み、連続殺人の謎を解く。前作とちがって笑いはないけれど、オールドファッションな推理小説へのラブレターのようなお話。
Comment: 東野圭吾氏の作品はまだ一部しか読んでいないが、長い飛行機の中の暇つぶしにちょうど良さそうだと思い、この2冊を購入。結構楽しめた。2冊とも推理小説として、あるいは謎解きとしておもしろいかというとそうではない。掟の方は様々な陳腐化してしまった典型的なトリックにうんざりする天下一が「なんかこのパターンは”あれ”のような気がしますけど、まさかそんなひねりのないすじじゃないだろうなあ」みたいな文句を言いながら解いていく。
2時間ドラマのテレビ欄をみて「この役者がやってるからこいつが犯人だ」みたいな話など、推理小説を読み慣れた人もそうでない人も、くすっと笑ってしまうような話が毎回でてきます。けっきょく馬鹿にしたようなトリック(ですらないところもまた皮肉っぽくできているんですけど)でしめられることが多いけれど、この本こそ「初めてやった時は新鮮だけれど、以降はすべてがまねになってしまうネタ」のひとつなんでしょうね。はちゃめちゃでどたばたですが、そこここに推理小説への愛が感じられるので(ちょっと読者を馬鹿にしている気配も感じますが)楽しめます。
呪縛の方はもうちょっとシリアスで、笑いはないのですが、正直にいってこちらの方がインパクトが強かったし、読んでいて楽しかった。推理小説というよりはその舞台をつかった氏の自分の小説への迷いや思いが暴露されていて、とてもメッセージ性の強い作品になっています。こういうテーマをこの不思議な街での殺人事件をつかってきれいに料理できてしまうところが、この作者の力なんだろうなと思います。とてもその点ではうまく終点が始点につながる形でお話が終わりとてもすっきりした気分で読了できました。
特にミステリーファンの方にはおもしろいのではないかな。いずれにせよ2冊続けて読むことをおすすめします。