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魔法使いハウルと火の悪魔 (ダイアナ・ウィン ジョーンズ)

Title: 魔法使いハウルと火の悪魔 (徳間書店)
Author: ダイアナ・ウィン ジョーンズ (西村 醇子 訳)
Category: ファンタジー
Story: ハウルの動く城原作。魔法使いや呪いが普通に存在する国インガリーでは町はずれに止まった奇妙な動く城をみて、人々が若い娘の心をすいとってしまうという魔法使いハウルの噂をし、女の子の一人歩きは止められていた。帽子屋を継ぐソフィはある日単調な生活に疲れて、近くに奉公にでている妹に会いに出かけた。その途中でハウルにであうが、その晩魔女の呪いで年寄りにされてしまう。

Comment: まず最初にいっておかなくちゃならんのは、原作と映画はかなり違う!ってことです。映画をみてからラブストーリーをもとめて原作を読まれる方は特に。やはり元はどちらかというと子供向け(みたいに書いてある)お話なので、いわゆる昔話のお姫様と結婚しましためでたしめでたし的な感じがあるので。アマゾンのレビューをみても映画をみてから原作を読んだかたはあんまり面白くなかったという方が多いような気がします。

でもって、なにが違うのか?まあ結末は一緒ですが、かなり各キャラの役割が違う。ソフィは3人姉妹という設定だし、荒れ地の魔女やハウルの師匠の魔法使いの設定も違います。戦争中という設定でもないし、窓の外を汽車が走るような街でもありません。ハウルが変身するシーンもないし。内容をばらしてしまうのもどうかと思うので、細かくは述べませんがとにかくかなり別物です。

最大のポイントはハウルの家族(肉親)が現在の(もしくは少し前の)ウェールズに有るという点です。ここで言いたいのは家族がでてくるとかそういうことではなくて、設定がイギリスなんです。インガリーというのもおそらくイングランドをもじったものですし、キィとしてジョン・ダンの詩が出てきたりします(この詩の部分の原作を読むと映画ですじがわかりずらかった人は、なんで最期がああなるのかわかるかも)。もちろんダイアナ・ウィン ジョーンズはイギリスの作家ですし、自然な設定なのですが映画では極力イギリスっぽい部分がはずされています。町並みも大陸風のヨーロッパですし、でてくるパンなんかもドイツ風(エントリーのジブリ二本立て参照)、つまり絵全体がヨーロッパの架空のどこかのような設定になっています。もちろんインガリーは架空の街だからそれでいいんですが、これはおそらく「イギリス+ファンタジー=ハリーポッター」の図式を避けたかったのでは?と邪推したりしております。映画化で舞台設定を変えるなんてよくあることですから、騒ぐほどのことじゃないんですけどね。

戦争やら変身やらの設定はおそらく「どんな姿でもいい、心こそが大事なんだ」というところを強調するべく変更されているのかなと言う感じ。全般に、なんでハウルとソフィがお互いに好きになったのかはわかりずらいので、スムーズに入り込みやすいように原作では2.8枚目くらいの勢いのハウルが2枚目(なんたってキムタクの声だし)で最初にヒーローっぽく登場させ、逆に変身によってソフィだけが見いだすことの出来る真実みたいな形にしたのではないかなと。やっぱり映画はあるていどわかりやすい必要があると思うのだけれど、原作はかなり複雑にいろんな話が絡み合っているので、その部分を宮崎氏がクローズアップしたのでしょう。謎解きや伏線はほっぽられた感じがありますが、映画で作られた人物像ははっきり言って原作より魅力的だと思います。なにより動く城が魅力的だしね。

と映画の話ばっかりになっちゃいましたが、原作も面白いんですよ。既に映画を見られた方は、わかりずらいハウルとカルシファーの契約のところがちゃんと書いてありますし、映画との違いを楽しめるかと思います。ただ普段ファンタジーを読みつけない方はちょっとうんざりするかもしれません。特に対象を子供として書いている(もしくはそんな風に書かれている)ところがこのうんざりの一つの要因になるでしょう。大人向けの方が良い方は彼女の「私が幽霊だった頃」を読んでみるのをおすすめします。こっちの方がスタイリッシュではありますね。(ただし全然関係ない話ですので、ダイアナ・ウィン ジョーンズを読んでみる気になった方にだけおすすめします)。

ちなみに続編もあります。こちらは魔法の絨毯の話をベースにしたお話で、ハウルとソフィ夫妻もカルシファーも登場します。が、主人公ではありませんのでご注意を。映画の方も続き物としてつくっているそうなので、どうなるのか興味深いです。既に1の時点でかなりストーリーが異なっていますから、2もかなり元の話からは離れると思いますし、もしかしたら全然違う話にするのかもしれません。この続編も読んだのですが、正直1の方が面白かったです。とりあえず1を読んでみて気に入ったら2も買ってみるというのがおすすめですね。

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2005年01月05日 17:45に投稿されたエントリーのページです。

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