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五線譜のラブレター

Dir: Irwin Winkler Cast: Kevin Kline, Ashley Judd, Robbie Williams, Elvis Costello, Alanis Morissette, Sheryl Crow, Natalie Cole
Story: 「キスミーケイト」などブロードウェイや映画音楽で活躍したコールポーターの半生。1920年代、パリでポーターは「パリで最も美しい離婚女性」と謳われたリンダ・リーと出会い、惹かれあう。ポーターはリンダに自身がゲイであることを告白するが、リンダは気にせず「独立したカップルとして夢を叶えたい」と答える。ポーターはリンダと結婚し彼女のサポートを得て成功をおさめるようになる。

Comment: 2時間弱でしたが、気を抜く暇のない映画でした。最期の30分くらいはかなりウルウルして、リンダが亡くなるシーンでナタリーコールの"Ev'ry Time We Say Goodbye"がかかった時にはホントに切なくてズルズル泣いておりました。結構まわりの人もウルウル来ていたようです。が、ストーリーにもあるように、そんなに単純なラブストーリーじゃないので、感動とかいい話だねえという涙ではないのですが、この手の音楽がお好きな方にはとてもおすすめです。音楽がシーンにぴったり来ていてぐっと来ます。その辺をひっくるめて年齢的には30以上、既婚の方の方がいろいろと感じ入るところが多いのではと思います。私個人としてはこの映画はとても満足ですけど(ま、一般受けはしないだろうけどさ)。

ケビン・クラインとアシュレイ・ジャッドはこのころのファッションをとてもきれいに着こなしていて映像的にも美しいです。二人とも自由でちょっとわがままだけどみんなに愛される(easy to love)魅力的な人物を演じています。外から見れば美しく仲の良いカップルですが、ポーターの「愛に対して欲張り」な夜の生活によって、常に微妙な緊張感と不健康さ(これはセクシャリティの問題ではなくて)がつきまとい続けます。この微妙な夫婦のあり方というか愛情は見ている方の緊張を誘います。結婚して夫婦として暮らしていく間にできてくる、恋ではない何かがむしろ純粋に描かれているのかもしれません。多分結婚を夢見る乙女がこの映画をみたら、才能はあるけどひどい男と一蹴するのかもなと思います。

ケビン・クラインは歌に演技に器用で、彼じゃなければこの映画はできないだろうなあと思わせてくれます。が、あまりに器用なので、ゲイとしてのシーンなんかが雰囲気ですぎていて、趣味のわかれるところかと。


この映画をみにいった一つの理由はもちろんロビーウィリアムスがでているからなんですが、いやあホント結構でてます。大スクリーンに大写し。二人の結婚披露宴でコミカルに歌うウェディングシンガーとしてでてくるのですが、オケと打ち合わせしているシーンから奇妙な存在感を発しております。この映画の原題De-lovelyのテーマとなるIts de-lovelyを相変わらずのいい声で歌っていて、エンディングにも流れて、ロビーファンとしては大満足。しかし日本では知名度がえらく低いので、映画館にいた大半のひとはきっと「なんであの変なウェディングシンガーがやたら写るんだ???」と思っていたに違いない。一応映画館でサントラのとなりにベスト版がおいてあったから、これを機会に聴いてくれる人が増えるといいけど。おまけに最初にパリでリンダリーに出会うシーンで歌ううたが、ロビーのSwing when you're winningにも入っているナンバーなので、最初っから盛り上がれます。歌っているのはケビンクラインですけどね。
彼以外にももちろん超豪華シンガー陣です。エルビス・コステロはベニスの仮装パーティでうたうおじさんとしてでてくるんだけど、やっぱりうまいですね。しかしあんなに太ってたっけ?それともあれは演出?そのほかナタリーコールやらもう大変。コール・ポーターの名は知らなくても曲はきけば分かるものばかりですから、かなり楽しめます。

演出はかなり凝っていて、ポーターが自分の半生をミュージカルにしたものを見ているという設定になっています。豪華なシンガーなんかも含めかなり凝った作りで、筋もそんな感じなので、単なるお気楽なミュージカル映画というわけではありません。贅沢だなあというのが感想かな。

ちょっと気になったのが、字幕。そんなに間違っていないと思うんだけど、「愛している」っていうのを安易に字幕に出すのはどうかと思った。というのはポーターはリンダにほとんど「愛している」とは言わないんです。少なくともI love you とは。彼女を思って書いた曲の中では何度もloveはでてくるけど、面と向かってはtake care each otherとかそんな感じで、微妙に言葉を使い分けている様に感じました。一行の字幕に酷な要求だとはおもうけれど、その辺は大事なんじゃないかしら。

リンダの死ぬ前のシーンでポーターの「僕の作品はみんな君のものだよ。君のために書いたものだから」という言葉にリンダが「全てではないわ。でも一部はその一部は確かに私のものだった。それだけで満足よ」と答えるシーンが印象的でした。

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2004年12月19日 21:47に投稿されたエントリーのページです。

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