Title: ペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)
Author: アンドレイ・クルコフ (沼野恭子 訳)
Category: 文芸
Story: 恋人がでていってから動物園のペンギンをひきとって一緒に暮らしているヴィクトル。作家として今ひとつ中途半端な彼はある日新聞社から、まだ死んでいない有名人の弔文を書きためておく仕事を引き受けることになる。彼は弔文を書いた有名人がなぜか死んでいくことに気がついた。
Comment: 謎はいっぱいでてきますが、別に何か解決されるわけではありません。その後どうなったかも明示されているわけではないし、不条理小説といえるかな。全般になんでなのか分からない(もちろん主人公もわからないし、何故か聞くこともない)出来事が、ベルトコンベアーに乗ってやってくるって感じです。読んだ感じはまさに村上春樹。羊を巡る冒険とかあんな感じです。
で、すっきりしないからつまんなかったのかというと、ちっともそんなことはなくて、ペンギン(おまけに憂鬱症で心臓病)と過ごす不思議な毎日が不思議にしっくりきて、読んでいて面白かったです。
憂鬱症でどこにいたら幸せなのかよくわからない、でも何となく幸せそうなペンギンはウィクトルそのものでもあり、小説そのものがヴィクトルの弔文でもある。彼の弔文を書いている、”次のヒト”がいた事なんて予定調和的すぎて何も驚かない。いつのまにか読んでいるこちらもヴィクトルの心持ちになってしまうところがこの小説の魅力かな。村上春樹が大丈夫ならこの小説は気に入るはず。私はこの表紙も気に入ったんだけどね。