Title: アフターダーク (講談社)
Author: 村上春樹
Category: 文芸
Story: 真夜中のファミレスで本を読むマリに楽器をもった男が声をかけた「ねえ、間違ってたらごめん。君は浅井エリの妹じゃない?」
Comment: 書き下ろし長編というふれこみでしたが、通勤中1時間で読了。どちらかというと中編じゃないですかね。前作の「海辺のカフカ」からわりとすぐの出版だったので、ちょっと驚きましたが、新作が楽しみでもあったので、出版早々購入したわけです。
全体にいつもの氏の作品の雰囲気と違うので、評価が分かれるところでしょう。私個人としては面白かったです。長編小説としては物足りない感じもしましたが、実質中編なのでこのくらいの感じが良いかなと。氏の作品としてはめずらしく全編三人称(読者という視点)でかかれています。このよくわからない視点は都会の深夜の時間の流れに、少し落ち着かない奇妙な感覚を与えています。主人公マリは村上作品に登場する、自分の世界を持つ、地味に見えるけれど自分を必死にだましながらがんばって生きていくという人物ですが、女の子としてこういう人がでてくるのは珍しい気もします。今回は不思議なせりふを吐く女の子もいなければ、そらからおさかなが降ってきたりもしない。ただ宙にういた視線があるだけ。
私はこれはこれで村上春樹にしか書けない小説だと思うのだけれど、いつもと違うせいかひどいレビューも多いみたいです。都会の片隅でテレビの砂嵐が時を刻むなんて村上ワールドだと思うんだけどなあ。