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時の旅人クレア (ダイアナ・ガバルドン)

時の旅人クレアITitle: 時の旅人クレア (ヴィレッジブックス)
Author: ダイアナ・ガバルドン(加藤洋子訳)
Category: ファンタジー ロマンス
Story: 戦争の間看護婦をしていたクレアはようやく祖国に戻り、夫のフランクとともにスコットランドに旅に出た。スコットランド史の学者であるフランクは地元の牧師に自分の先祖の話を聞いたりしていた。ある日ストーンサークルへ散歩に出かけたクレアは異変を感じ気を失う。気がついてみるとそこは200年前のスコットランドで、夫にとてもよく似た男に出会う。

Comment: タイムスリップものの王道を行く展開なのですが、背景や人物のディテイルがばっちり書き込まれているので、安っぽい感じがしません。年代をかなり史実と合わせてあるし、それほど荒唐無稽な設定もないので、すんなりお話に入り込めます。昔へ行く方のタイムスリップものの主人公の基本は「これから起きることをしっている」「現代医学の知識」「気丈な性格」を武器に活躍するわけですが、このお話もまさにそのとおり。まあそのための設定(育ててくれたおじさんが考古学好きだったので、学校に行かずに遺跡めぐりしていたとか、看護婦だとか、夫が歴史学者とか)がしっかりしすぎてちょっとうんざりするところもありますが。ヒロインはその生い立ちのために既成概念にとらわれないタフなところを生かして大活躍。そんなかんじなので、ヒーローとの掛け合いやそのシニックな独白には結構笑わせられます。ヒーローの方もタフで頭が良くて…年下なんだな。ここが実は全体のミソかもしれません。スコットランド人らしく頑固ながら、彼女の意見を受け容れ運命に立ち向かっていくっていうのは、この若いってところがうまく効いています。

ヒーロー・ヒロイン以外の登場人物もそれぞれに癖があり、読み進めるにつれて登場人物が増えてもそんなに混乱せずに読めます。同じ名字の人がいっぱいでてきますが、大丈夫。いろんなところにそれぞれの人物に関する伏線や背景がちりばめられていて、ちゃんと最期に伏線が生きているので納得できます。ちょっと緻密すぎて疲れますが。

翻訳に関してはちょっと不親切かなと思うところがいくつか。amazonのレビューでも言われていますが、次の巻の内容が明かされている(あるいはその巻のネタバレ)あとがきは良くないとおもいます。私はあとがきから読むわけではないけれど、1巻を読み終わってあとがきを読んだら、これまでにでてこないエピソードが書いてあって???。1巻だけでなく、その後もそうなのでかなりがっかりしました。たぶん原文そのままの訳だからしょうがないんだろうけど、スコットランドの習慣を説明した方がよいのでは?という点がいくつか。たとえばヒーローのおじさんが彼の花婿衣装を見て怒るシーンとか、タータンチェックの柄が家ごとに決まっているってことに気がつかないとなんで怒ったのかわからないんじゃないかなあ。私は読んでいて「ん?」と思って読み返して、「あーそういうことか」と思ったけど、ちょっと不親切かもね。まあでもものすごいスピードで訳本をだしてくれているので、あんまり文句を言ってはいけないのかも。次のシリーズも早めによろしくお願い致しますです、はい。

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コメント (2)

たらり子:

konamaさんのレビューを読んだら・・かなりお気に入りの部類ですか?私、現実とあまりにもかけ離れていたら、????だから、結構、このようなジャンルでも面白そうかなぁ?って思った。

時の旅人・・なんか合唱曲であったよね?

「時の旅人」なんて、普通の言葉で考えられない感じなので、このネーミングの語源は何処なんでしょう?

そうですね、結構面白かったです。なにしろ長い。なので、もうしばらく楽しめそうです。

でもこの話は結構細かく書き込んであるので、現実とかけ離れた印象より、「細かすぎ」っていう印象をうけるのでは?

時の旅人って曲ですか?知らないなあ。

どうなんでしょ。原題はOutlanderだからなあ。主人公のクレアさんが実際時をいったりきたりするので、どなたか日本語訳するときにつけたのでしょう。邦版でもシリーズタイトルはアウトランダーってことになってます。

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2004年04月11日 19:55に投稿されたエントリーのページです。

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