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魍魎の匣 (京極夏彦)

魍魎の匣Title: 魍魎の匣 (講談社文庫)
Author: 京極夏彦
Category: 推理・ホラー
Story: 飛び込み自殺に出くわした刑事木場は被害者の顔に奇妙な見覚えを感じる。彼は最近起きたバラバラ殺人事件の担当になるはずだったが、個人的にこの管轄外の捜査に関わっていく。一方小説家関口はバラバラ殺人を取材にいき奇妙な体験をする。彼らは友人の京極堂に相談することになるが…。

Comment: 前作「姑獲鳥の夏」を読んで、面白いけど気持ち悪いから続けては読めないな、と思ったのだが、また読んでしまった。相変わらずうんちく京極堂とよりまし関口、過去の見える榎木津など、前作のメンバー総出演である。それぞれの役割は基本的に前作と変わっていない。相変わらず怖気持ち悪いストーリーで、怖いけど読みやめられないのに、読み終わるともっと怖い。今回は気持ち悪いが強いかな。深夜3時に読み終わって暗闇にちょっとうんざりしたくらいだ。方向性としては江戸川乱歩なんだろうな。孤島の鬼とか人間椅子とか。

謎解きの全貌というか、全体にストーリーはホラーに近い。とてもどの登場人物も常人とはちがうのだが、少しずつ重なるところがあって引き込まれる。特に本作は導入がいい感じで「ひどい」。ディテイルがねちねちと書き込まれていて、ぐるぐると引っ張り回される。これはちょっと謎の提示という意味ではちょっとずるいかもしれない。推理小説としては探偵の京極堂だけが知っていた知識があったり、重要人物がとても淡く書かれていて、読者にとっては公平でないといえるだろう。密室トリックもちょっと生理的嫌悪感がひどいし。だがホラーとして読めばこの怪しさといい、気味の悪さといいしっかりとしたストーリー構造をもったホラーの傑作といえるのだろう。今回は前作より京極堂のうんちくが少ない(あるいは分散されている)のは良かった。正直長すぎるのはしんどい。

で、最後に明かされる真実なのだが、はっきりいって恐い。おそらくみんな幸せなので恐い。それに魅入られる人間が恐い。

マッドサイエンティストとして描かれる、美馬坂教授だが個人的に彼のキャラクターには疑問を感じる。京極堂は彼を科学者としては優秀で真摯だという風に評価しているが、そうだろうか。彼が科学者として本当に真摯ならば、あの方法にひたすら執着するのではなく、新たなアプローチを始めているだろう。少なくともうまく働かないと分かっている方法を繰り返しはしないだろう。悪魔的な人物像ではなく、その真摯さが作り出した悲劇の方がストーリーとしては収まりがよいと思うのだが、ひいき目だろうか。
(追記はちょっとネタバレです。)

ネタバレ含む:
読み始めて、「あ『ボキシング・ヘレナ』だ」と思ったのは私だけ?

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コメント (2)

京極さんの本は寝っころがって読めないのが辛いです。

ねーねー、konamaさんと紀伊國屋に行った時、
確かにアーノルド・ウエスカーの本があったよね?(「橋」だったと記憶しているのですか)
それなのに紀伊國屋のサイトでどう検索しても出て来ないのよー。
Amazonにも置いてないみたいだし。
無性に読みたくなって買おうと思ったのですが、しゅん、です。
原語のものはぞろぞろ出てくるのですが...。

ここの話題にぜんぜん関係ないけど、うちにフェリシモでもらったビビンパ鍋(?)がひとつあります。
ひとつじゃどうすんだい、って感じで使ったことないです。

厚くて重いよね。寝ながら読むと恐そうだし。

ウェスカーの特集雑誌は覚えてるんだけど、橋あったっけ?三部作っていうやつだよね。全集は古本なら手にはいるかもしれないけど、入ってるんだろうか。
・http://web.kyoto-inet.or.jp/people/kosho/info/58/5803a.htm
(高い。)
・http://www.duckbill.co.jp/mokuroku/920.html

私は検索している途中で彼が奥さんと離婚していたのを見つけてショックだった。あんなに楽しそうな本だったのに…。

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2004年02月08日 21:40に投稿されたエントリーのページです。

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