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ある日どこかで

リチャード・マシスン(創元推理文庫,2002)
ある日どこかで原題はsomewhere in Time.私はみたことありませんが十数年前にクリストファー・リーブ主演で映画化されているようです。宝塚でも上演されたらしい。解説を読む限りにおいては、ようやく邦訳がでたという感じみたいですね。お話は脳腫瘍であと数ヶ月の命であると宣告された主人公が逃避の旅にでて、偶然泊まったホテルで見つけた昔の舞台女優のポートレイトに恋をする。彼女に会うために彼はタイムトラベルに挑むことにするが…。というわけでSFラブストーリー(?)といったカテゴリーになりますか。
 この本は前回紹介した奇蹟の輝きの前にかかれた作品で、この2作だけが著者のこれまでの作品と毛色の違うラブストーリーになっています。完成度としては奇蹟の輝きの方が受け入れられやすい形になっていると思いますが、ストーリーのお行儀良さがすくない分だけ、この作品には力強さみたいなものがあります。脳腫瘍で死にかけているという設定から予想されるとおり、最終的には「現実社会からみれば幻想」みたいな結末がほのめかされています。全体に、主人公の必死さみたいなものが、全身の筋肉に力が入りっぱなしのような勢いであふれていて、わずかな時間の間の恋が切なく描かれているわけです。この時間のないために、主人公は自分の事をとにかく彼女に知ってもらおうとかなり強引に動き回るわけですが、一歩引いて考えてみるとかなり独りよがりですよね。まあこの辺りも作者の思うところの自分の体験した真実になるのでしょうが、あまり主人公に感情移入できないっていうのも(それも途中から)どんなもんかなと思います。

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2003年05月25日 22:49に投稿されたエントリーのページです。

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