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アドルフの画集

アドルフの画集 アドルフの画集
Dir: Menno Meyjes Cast: John Cusack, Noah Taylor
(写真はMainichi INTERACTIVEから拝借。配給元は東芝エンターテイメント

Story: 第一次大戦後のミュンヘン。街は混乱し、すむところもない帰還兵にあふれていた。マックス(キューザック)は第一次大戦で右腕を失うが、無事に帰還して画商をいとなんでいる。ある日、絵を売るためのパーティの途中に会場の外にでると、スケッチブックを抱えた帰還兵にあう。絵を持ってくる様に言うと彼はヒットラーと名乗った。

Comment: かなり最初から引き込まれた。面白いっていう主題でもないけれど、飽きない。淡々と事態が進行していって、ある時戻れない時点に達してしまう、そんな映画だった。

とりあえず、この映画の原題はMAX。つまりこの画商マックスの物語だ。キューザックは彼を育ちのいい、インテリな、シニックな男として演じている。戦争でかれはいろいろなものを失った。今は物質的なもの(家族・金・仕事)に困っていないが、常に喪失感といらだちがある。
一方、ヒットラーは金も家も家族もなく、常にとてもフラストレーションがたまっている。ノア・テイラーは常にうつむいて、神経質に動き回り、目だけがぎらぎらと血走っていて、必死に何かではい上がろうとしているヒットラーを演じた。

ストーリーは史実もあるし、そんなに劇的なものではない。見る人はみんなゴールを知っている状態で、それまでの過程が、ふらふらと様々な可能性をさまよう様を丁寧に描いている。いろいろなことが詰め込まれていないし、場所も限定されていて、落ち着いたストーリーでよかった。
 難しいのはヒットラーだ。ノアテイラーはその点とてもよくやっていると思う。偉いとか、悪いとか、そんなものではなくてある種、異質なしかし価値観の希薄な存在感がある。これはすごいことだ。でもこれは結局ヒットラーを映画化することの困難に直結していると思う。プロデューサーのアンドラス・ハモリは

「ヒトラーという怪物を理解するためには、彼にも人間の顔があったことを受け入れなければならない。このオーストリア出身の無名で、芸術で成功することのできなかった男が一体どこから来たのか、そして彼がどのようにして歴史上最も恐れられた男に変貌していったのか?今でもそれを追究するのは危険だと感じている。けれども追究しないのは、もっと危険なことだと私は気付いたのだ」(オフィシャルサイト・制作秘話から)

といっている。実際未だにヒットラーを映画化する解釈するということは評価につながるとかんがえられているし、タブーに近い。資金集めもかなり大変だったらしい(キューザックは自身ノーギャラということでこの映画を実現した)。そのタブーを大きく踏み込んでいるのは確かだが、やはりもやもやとした人物になったのは否めない。これというはっきりした性格が見えない。全くの悪の存在として描くのも無意味だし、全く普通の人とするわけにもいかない。結果、人の言葉に妙に左右されやすい人物になった。さらに神経症っぽい。やっぱりそういう意味ではまだ自由に描ける時代は来ていないのだろう。

この映画のカメラワークは結構面白くて、一つの画面に2つの対照的なものを映し出すシーンがいくつかあった。別にハルクみたいな画面分割ではなくて、吹き抜けの2階にキューザックがいて下の階に家族の団らんとか、最後のシーンとか。ちょっと新鮮だった。

キューザックはとても粋なかちっとしたコートの似合う男でよかった。ヒットラーへの微妙な罪悪感や嫉妬が表情をよぎっていい感じ。腕のない役の動きもわざとらしくなく自然だった。ノアテイラーは画面の中ですっと目がいく不思議な魅力があった。

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コメント (2)

たらり子:

観に行かれたのですね。

この映画もとっても気になります。昨日、郵便局の待ち時間にクロワッサン(だったか?)を読んでいたら南美希子さん(漢字不安)もレビューを書いていらっしゃっているのも見かけました。

市内の映画館では上映されなく、隣の隣の市ではやると言う話でしたが、今日、各家庭に無料配布されるタウン誌みたいなのを確認したら、どうやら、ソコでも上映がないような・・。

konama:

オフィシャルにはそちらのご近所の映画館が上映予定として載ってますね。大阪も東京より半月ぐらい遅い公開だから、もうすこししてから予定がでるのかもね。

エンターテイメントではないので、比較的体力・気力に余裕のある時に行くのがおすすめです。

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2004年02月24日 23:31に投稿されたエントリーのページです。

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